「三昧の法悦」2019年3月【No.189】

最近は年間100万人、二人に一人がガンにかかる時代だということで、何人もの著名人がガンになられたということがニュースになっております。最近、水泳の女子日本のホープである18歳の池江璃花子選手が白血病になられたというニュースは、日本国内に留まらず、世界中に衝撃をもって受け取られました。東京オリンピックを最大の目標にして研鑽を積んでこられた池江選手の心中を思うに、青天の霹靂であり、本当にやるせない思いを抱いた方は数多くおられると思います。それに引き続いて52歳の堀ちえみさんが舌がんのために舌の6割を切除するという過酷な手術を受けられ、ステージ4で既にリンパ節転移があるという厳しい状況だということが報じられました。
私たち自身も他人事ではなく、いつ自分の身にこの深刻な病気が降りかかってきても不思議ではありません。それでは一体どのように日ごろ心がけたら良いのか、宗教者、禅僧の立場からこの深刻な問題をどのように考え、対処すべきだと考えるのか。今月はこの切実な事柄について、小衲の私見をいささか披露させて頂きたいと思います。
以前に少し触れましたように、小衲は年に数回ほど京都の名医に血液検査による診断を受けております。「サンデー毎日」に「ガン患者が殺到する医院」として連載され大反響を呼んだ烏丸和田クリニック」の和田洋巳(ひろみ)先生といえば、ご存知の方もあるでしょう。小衲自身は別にどこといって具合の悪いところはないのですが、以前には毎年のように受けていた人間ドックに行かなくなって月日が経つので、念のために検診を受けてみることにしたのです。和田先生のことを初めて知ったのは、6,7年も前のことでしょうか。先生のところで看護師をしておられる方が、法類の和尚さんの奥さんで、小衲が当時コラムで述べていたことを読まれて、「うちの先生と同じことを言っておられる」と感じられ、来訪された結果、小衲も初めて和田先生にお目にかかる気になったのです。
先生の第一印象は、「初めて本物の医者に出逢うことができた」というものでした。国立大学の著名な病院の医者の多くが「金や名誉の固まり」であるという率直なご意見も伺うことができました。毎年のように人間ドックを受けていた弟を10年以上前に前立腺ガンで亡くしてから、投薬やガンの標準治療に対する疑問をもっているため、小衲は薬は極力飲まず、検診と言っても血液検査による検診だけですが、和田先生は時間をかけて実に懇切丁寧に解説されますので、人間ドックに行かなくても身体の現況がよく分かるのです。
さて、先日病院に伺った際に、先生が「免疫力がアップしていますが、何かされましたか」と言われたのに対して、小衲は「お釈迦様がされていたように、自分の呼吸に集中するようにしています。特に寝る前には、呼吸三昧の境地に入ってから休むようにしています」と申し上げると、「なるほど、それで免疫力がだいぶアップしたのですね。血液検査の結果を見ると、その人の生活態度が的確に分かるのが興味深いです」と言われ、さらに先生の患者である二人の禅僧がガンに罹患しながらも坐禅によって免疫力が向上して存命中であることに言及されました。「坐禅により免疫力が上がりますよ。禅は素晴らしいですね」と続けて言われたのですが、これはなにも禅だけではなく気功や合気道でも免疫力が向上できるのではないでしょうか。
この話を和尚方の集まりの席で話したところ、「それはきついね。坐禅によって免疫力が向上するという話をしていて、自分が将来ガンになったら面目丸つぶれになるね」ということを言われたので、小衲は「その時はその時ですよ」と即答しました。つまりいたずらに狼狽するのではなく、自分の坐禅工夫が足りなかったなと猛反省して、一層工夫三昧に励み、三昧境を日々楽しんで、副作用の全くない酵素風呂や温熱療法などで身体を温めると共に、和田先生が推奨される食事療法をすれば事足りると思います。
和田先生が言われるには、ストレスがガンに罹患する大きな原因のひとつだそうです。いつも穏やかな心で何事に対しても前向きで、マイナスの言動は慎むことが大切です。よく他人のことを批判したり、愚痴ばかりこぼしたりする人がありますが、そうした人たちはストレスで免疫力が下がっていくことが多いのではないでしょうか。
嵯峨嵐山にある天龍寺の開山で、南禅寺の第六世でもあられる夢窓国師は、「青山幾たびか黄山に変ず、浮世紛々、総に干(かかわ)らず、眼裏塵(ちり)あれば、三界窄(すぼ)く、心頭無事なれば、一牀寛し」という「山居の詩」を残されていますが、いささかの雑念妄想も執着もない明鏡止水のようなこの心境をわれわれは常日頃養っていきたいものです。

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