「向上の底力」2019年2月【No.188】

大坂なおみ選手がテニスの全豪オープンで優勝し、世界第一位になったのは、世界中の多くの人たちの耳目を驚かせました。わずか一年前には70位にもなっていなかった大坂選手が全米オープンに引き続いて、全豪オープンでも優勝したのですから、誰もが驚き感激するのも無理からぬことです。
全豪オープンに向けて身体をかなり絞り込むほど厳しいトレーニングに励んだと伝えられていますが、一番の勝因は何といってもメンタル面の向上であることは、多くの人たちが指摘している通りです。
以前の大坂選手は、失敗するとラケットを地面に投げつけたり、「自信が持てない」などと弱音を吐いてコーチから慰められたり、時として消極的でマイナスの言動が見られたのですが、この全豪オープンではそうした面は影を潜めているように見えました。第二セットを逆転負けしたあとですぐさまトイレットブレイクを主審に要求して再び現れた大坂選手は、短時間の間に気持ちの切り替えをして、「私は相手のクビドバよりも良いプレーができる」という自信をもって、第三セットは感情を起こすことなく戦えたのが、好結果に繋がったのだと思われます。臨済禅師も、「まだ雑念が出ていなければ、出さない方がよい。もし雑念が出てしまったら、雑念を続けないことだ。そうすれば、十年間みっちり禅の修行をするよりも、勝ることになるであろう」といわれております。元テニスプレイヤーの専門家も、「あれだけ切り替えられて、本当に落ち着いたプレーができたのは、考えられないことです」と驚嘆しているのは、言い換えれば、気持ちの切り替えがいかに困難であるかということを物語っていると思われます。
男子の方はジョコビッチ選手が難敵ナダル選手を圧倒的な力で退けましたが、ジョコビッチ選手との試合途中で負傷棄権をした錦織選手は、またしてもネガティヴ発言の連発で、「自分自身に失望している」だとか「自分がジョコビッチ選手と試合するときは、いつも一番きついときだ」と愚痴をこぼしています。もちろん、直前に5時間を越える死闘を経験しているので、体力的にかなり疲労がたまっていたことは確かでしょうが、それを試合後にせよ、言葉に出すのははなはだ感心しません。弱音や弁解に聞こえます。
錦織選手のように感情を露わにする人は、相手になんなく不安定な精神状態を見抜かれて、ますますその弱点を突かれることになるでしょう。誰か彼に精神面の助言を与える人はいないのでしょうか。これに対して、中途で敗れはしましたが、愚痴ひとつこぼさないフェデラー選手はやはり大物の風格が感じられます。最後に全豪オープンで見事優勝したジョコビッチ選手の言葉をご紹介しましょう。
「自分のテニスをさらに磨き続け、メンタル、フィジカル、感情を含めた総合的な状態の良さを維持することに、全身全霊を注ぎたいと思っている。それができれば、この先数年もこれだけの高いレベルでプレーできるだろうし、やがてはロジャーの記録に近づくことにも挑戦できるはずだ」

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