「禅の実参実究」2020年06月【No.203】

 心配していたコロナウイルスの感染爆発は今のところ起こっておりませんが、第2波、第3波は恐らく来ると思われます。「封じ込めに成功した」などと気を許して以前の状態の日常生活に戻ったら、いつのまにやら感染者が増えてとんでもないことになりかねません。幸いに、街頭インタビューなどを見ても、自粛要請が解除されつつあるとはいえ、感染拡大の第2波について「心配している」という人が大多数いるように思われます。それでもゆめゆめ油断大敵の心構えを怠ることなく、ひとりひとりが細心の注意を払うことが大切ではないでしょうか。

 南禅寺の本山でも、この6月から例月出頭が再開されますが、廻向をよむ維那(いのう)以外は全員マスクをつけて、充分の距離を取り、行道や法要後の茶礼はおこなわないなど、一般の方々に対しても、寺院の僧侶の対処の仕方をご覧頂くという方針でおります。

 わが光雲寺でも、月2度の月例坐禅会(第2、第4日曜。午前8時半より午後2時半まで)、土曜の夜坐禅(午後8時より。7時50分までに入場のこと)、南禅寺禅センターの坐禅研修は再開の運びとなりますが、くれぐれも細心の注意を払いながら行うようにしたいと思います。参加ご希望の方のご来訪をお待ち申し上げております。

 さて自粛中であるとはいえ、お寺での生活は毎日の内外掃き掃除や草引き、畑仕事や料理など、色々とやるべきことがありますので、身体がなまって運動不足になることはありません。特に住職は率先垂範してやらねばなりませんが、別にそれを何ら負担に思うことなく、楽しみながらやれるというのが禅修行の有難味です。作務をしながら工夫三昧になり、その動中で培った定力でもって坐禅をして禅定を練るという、実参実究が禅の道です。

 若者の中には、えてして書物を読んで知識を吸収することから一向に離れられない人もいるようです。わが身で「知識分別では本当の安心を得ることができない」と踏ん切りをつけなければ、覇気(はき)に満ち、迫力ある動きの日常生活を送ることはなかなかできないでしょう。私は長岡禅塾在塾中の博士課程3年間は週数日しか大学に行かずに、坐禅弁道に打ち込んだものです。

 禅の専門道場(僧堂)では、書見厳禁で実参実究に向かうような体制をとっているのは有難いことですが、それでも本当に目の色を変えて公案工夫に取り組み、禅定の醍醐味を味わい尽くそうという雲衲は少ないように思われます。
一般社会の方々でも、娑婆生活のさまざまな葛藤に疲れ果て、気分を一新して禅修行を本格的にしてみたいという方があれば、どうぞご来訪をお待ちしております。

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