「作務三昧」2021年08月【No.217】

時あたかもオリンピックに合わせたかのように、コロナの感染拡大が予想以上の速度で拡大しております。緊急事態宣言中にもかかわらず感染者が爆発的に増え続けている東京を中心とした関東の1都3県の状況は特に深刻ですが、関西も大阪を中心として兵庫・京都が拡大の一途を辿っております。それのみならず、今回の第5波は全国的規模のようで、まことに憂慮すべき事態です。

 しかしながら、オリンピックそのものの中止を求める声は意外と少ないようです。野党の或る党首も、「いま中止を求めれば、かえって混乱する」と言明しております。連日の各国選手たちの奮闘ぶりや、金メダルの獲得がこれまでで最大の数を記録した日本人選手たちの活躍を見ていると、感銘を受けた人が多かったこともあるでしょうが、何よりも今回のオリンピックの試合のほとんどが無観客で開催され、オリンピックと感染拡大とはあまり因果関係がないと思われるからではないでしょうか。

 オリンピックの自宅観戦に専念していれば、これほど感染者が増え続けることはなかったはずですが、感染者の7割を超えるといわれる20代・30代の若者たちが街中に出歩いて感染を拡大しているのが、一番の原因でしょう。40代・50代の中年の人たちの感染も増加しており、それに比べて60代以上の感染者や、従って死亡者全体は、以前と比べてかなり減っているということです。

 拙寺にも5人の若者が下宿していますが、コロナの感染に関してはくれぐれも気をつけるように、再三にわたり注意しております。彼らは朝の5時半には起床してお寺の内外の掃き掃除を始め、酵素玄米のお粥の朝食(禅寺では粥坐と申します)を食べた後に、午前8時まで草引きをしてもらいます。もちろん学業が最優先されますから、レポートなどを書く必要がある人には早めに上がってもらっても結構だということは伝えてあります。

 いずれの寺院でもそうでしょうが、梅雨明けのこの時期には一斉に雑草が生えて参ります。総勢7人で連日草引きしても、雑草は次から次に生えて、手で引くだけでは間に合わず、やむを得ず草刈り機を使うこともよくあります。学生さんたちにはそれ以外にも自由時間にバイトとして時給千円で草引きをしてくれるように依頼してありますので、みんな頑張って草引きに励んでくれ、食事代こみ4万円の下宿料をはるかに上回る成果をあげて、毎月お寺の方から彼らに支払いをするのが通常になっております。それ以外にも数名の外部の方が不定期で除草作務にバイトで来てくれます。7人以上で草引きしてもなかなか手が足りない程の雑草が生えてくるのですが、他のお寺さんは一体どのようにしておられるのかお尋ねしてみたい気持ちです。

 私は昨年の4月1日から大本山南禅寺の管長に就任いたしましたが、もとより連日率先垂範して作務をしております。草引きなどのスピードは「昔とったきねづか」ではありませんが、若い人たちには負けません。また雑な取り方をして雑草が残っているのを注意することもよくあります。畑などの畝作りなどは私の専任事項です。畑で育てた無農薬野菜を収穫して、時には下宿生さんたちに手料理を作ることもあります。ただ禅寺では作務をしながら無字三昧など動中の公案工夫をおこなうように指導しておりますので、雑談などする者には即座に注意しております。

 こうしたお寺の生活状況を伝え聞いて、下宿生さんたちの知人で下宿希望の若者があとをたちません。作務三昧で若者を育てるこの生活方式が他のお寺さんの何かのご参考になれば、幸いに存じます。

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