「作務三昧の法悦」2022年12月【No.233】
今年の紅葉の色づきは例年より早めだったようですが、色彩の鮮やかさもひときわ際立っていたような気がします。ただ樹によって早く色づくものと、だいぶ遅れて色づくものがあり、それによって紅葉の風情が長く楽しめることになります。南禅寺から永観堂を経て光雲寺にいたる鹿ケ谷通りは紅葉を楽しむ人達で、コロナ禍にもかかわらず、例年のごとくにぎわいました。
しかし11月下旬から12月になると、ますます落葉が増え、連日朝まだ暗い5時過ぎからヘッドランプをつけて、境内内外の掃き掃除に精を出す日々が続きます。毎日竹ぼうきをもって掃き掃除をしながら思うのですが、こうして身体を動かして作務することが、健康維持のためになると同時に、法悦の境地を育(ぐく)むことにもなると実感します。
掃き掃除を負担に思ったり、落ち葉の多さに辟易(へきえき)していやいやながらやるようでは、法悦の心境を味わえるはずがありません。乗りに乗って掃き掃除に取り組んでいるその上で、数息観なり無字三昧の工夫に没頭しながら身体を動かすと、ますます法悦が増し、身体が楽になるから不思議です。
実は早朝に掃き掃除しても広い境内地の内外を綺麗に掃くことは到底できませんので、日中の多少の音を出しても他人に迷惑のかからない時間帯に、新しく購入した電動式ブロアーで大量の落ち葉を集めていて、突然右肩に激痛が走りました。脱臼(だっきゅう)したかと思いましたが、どうやら肉離れのようです。
湿布薬を貼って2日ほどすると痛みもだいぶ和らぎましたので、今日からまたブロアーを使い始めました。
山のように積まれた落ち葉は、以前のコラムにも書きましたように、堆肥にして畑の肥しにします。数ヶ所の日本料理店さんからも野菜くずを頂き、それを専用の乾燥機にかけて乾燥させたあとで、堆肥と混ぜて使うと、畑の野菜が驚くほどすくすくと育ちます。光雲寺の畑は19畝(うね)あるのですが、無農薬の有機野菜がこれまでにないほどすくすくと育っているのは、乾燥した野菜くずのおかげかと有り難く思っております。
こうしたお寺での生活をしてみたいと希望する学生さんが後を絶ちません。大学生・大学院生の親御さんは下宿代や食費の仕送りが大変だと伺っております。各寺院でも廉価で学生さんたちを下宿させて、掃き掃除や草引きをしてもらうというようになれば、助かるご家庭は多くなるでしょうし、お寺も清浄になって結構ではないでしょうか。このようにして法悦を日々享受して行きたいものだと思います。