「坐禅工夫の醍醐味」2020年12月【No.209】

新型コロナウイルスの感染拡大が一向に収まりません。それどころか、感染者の数は最多を更新する日々が続いています。しかし、どうもコロナ慣れもあるのでしょうか、この秋の紅葉の時節、京都では観光客が多く見受けられました。

 わが南禅寺でも文化講座が開かれ、人数限定で十分に距離を置いた形ですが、私も「三昧境の法悦」という演題で話を致しました。4月に管長になってから最初の法話です。そのあと1時間の坐禅、そして、俳優であり仏師でもある滝田栄さんの1時間半に及ぶ講演と続きました。

 前夜の会食の際にお聞きしたところでは、以前に大河ドラマで徳川家康公を演じられた滝田さんは、私のwebsiteである「楽道庵」の家康公に関する記述を見て、「こんな家康公を演じてみたい」と強く思われたそうです。その文章は基本的な家康公伝である『披沙揀金』や『松永道斎聞書』に基づいて書いたものです。「光雲寺には運慶作と伝えられる聖観音像や玄信作の釈迦如来像があります。滝田栄さんは仏像彫刻に精根を傾けておられるということですので、南禅寺での講演後にお時間があればお越しになりませんか」とお誘いすると、「ええ、ぜひ」ということになりました。お見えになった際に、『徳川実紀』の「家康公伝」5冊を、「どうぞごゆっくりとお読みください」とお貸しした次第です。前述の二つの著作に関しては、「重要だと私が思うところを現代語訳して添付ファイルでお送り致しましょう」とお約束致しました。

 11月中には、本山でのこの法話の他にも、或る金融機関からの依頼により、二度にわたって「坐禅工夫の醍醐味」という演目で1時間の法話を致しました。この信用金庫は、何と50年もの長きにわたって137回も、顧客相手の坐禅会をおこなってきているということでした。今回11月におこなった3回の法話では、形だけの坐禅ではなく、いかにすれば真の三昧境に入ることが出来るかということを、私自身の体験に基づいてお話しました。本山での法話を取材しに来ていた記者の人がのちに、「あの法話を聞いて、坐禅がしたくなりました」といってくれたのは、嬉しい反応でした。

 長年坐禅をする人でもなかなか真の三昧境に入ることが出来ないのは、他でもありません。坐禅していても、呼吸を数える数息観なり、公案工夫を真剣にしていないからです。真剣に工夫すれば、三昧境には入ることはさほど難しくありません。そして、大切なことは、足を組んで坐禅をする間だけ工夫するのではなくて、それこそ目の色を変えて、四六時中、数息観や公案工夫をすることが必要です。

 以上のことを、私自身の体験を踏まえながら話したのですが、聞いた人たちの心に響いたとしたら幸いです。こうして少しずつでも実参実究する人が増え、禅門が興隆する一助になればと念願しております。坐禅体験をご希望の方は、団体の方は、光雲寺における「南禅寺禅センター」の坐禅、個人の方は、月二回の月例坐禅会や土曜の夜坐禅にご参加お待ちしておりますので、共に「坐禅工夫の醍醐味」を体験しませんか?

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