「大本山南禅寺における改衣式について」2026年02月【No.270】

 今回大本山南禅寺において3人の「改衣式」が挙行されました。これは南禅寺派の住職あるいは副住職となるために必要な行事です。「本式」とも言いますが、妙心寺派などでは「垂示式」と呼んでいるようです。本来は後水尾天皇の離宮のあった「南禅院」で行われるのが普通なのですが、南禅院は目下復旧工事中なので、国宝の清涼殿で執り行われました。

最初に「職状受」の儀式があり、引き続いて、開山・大明国師、創建開山・南院国師。開基・亀山法皇に対して焼香する「弁香」があります。そのあとで各人が和尚方の面前で漢詩で自分の境地を唱える「法語」があります。そしてお抹茶茶礼があり、管長である私の、「改衣式無事円成(えんじょう)、法幸に存じます」という言葉で全員が低頭してからお抹茶を飲みます。その後、改衣式を受けた3人がそれぞれ自分の考えた法話を出席者全員の前で話します。今回の法話で印象深かったのは、南禅寺本山の部員を5年続け、関東の秩父の名刹に住職として赴くことになっている若者が、自分の法話に感極まって嗚咽してしまった場面があったことです。大病にかかり病床で虫の息の祖父に向かって、「おじいちゃん、ぼく立派なお坊さんになるよ」と話しかけると目をつむっていた祖父は、かすかに笑顔を浮かべたように見えたというのです。

 改衣式終了後は法堂(はっとう)で法要があり、その後、「龍虎の間」と呼ばれる本山の一室で、管長である私が3人に訓示を述べました。その際、私は自筆の朱扇を進呈し、3人は「相見香(しょうけんこう)」と呼ばれる金一封を持参するのが通例となっております。私は3人に対して、「これからあなた方がお寺の住職としてやって行く上で大切なことは、お寺の全体に心を配り、率先して作務や草引きをして伽藍を清浄に保つことです。私のお寺にも4人の学生さんが下宿して一緒に作務をしますが、まず私が3時50分に起きて粥(しゅく、朝ご飯)の準備をしてから率先して外掃除に出ます。しかし本当を言えば、そのようにお寺を清浄に保つだけでは不充分です。できれば、数息観か無字三昧の工夫を日頃から続けておこなってほしいものです。三昧境の法悦に入ることができれば、日々を充実して過ごすことが可能となります。どうか頑張ってこれから充実したお寺での生活を送って頂きますように」、こう言って私は彼らを見送りました。彼らが将来充実した住職としての生活を過ごすことを願うばかりです。

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