「工夫三昧の法悦」2020年08月【No.205】

 新型コロナウイルスの感染拡大はとどまるところを知りません。ついに7月31日には、東京463人、大阪216人、兵庫62人、京都29人、愛知192人、福岡170人、沖縄71人と、計1565人の過去最多の感染者数となりました。これからいよいよ「Go to トラベル」キャンペーンによってさらに感染が全国的に拡大されたら、東大の児玉龍彦名誉教授が参議院予算委員会の参考人として証言しておられたように、「8月にはそれこそ大変なことになる」、「今、全力で食い止めないとニューヨークの二の舞いになりかねない」でしょう。

 こうした学者や医療関係者の切実な懸念表明に対して、政府行政当局の対応の無策ぶりがあまりにも目につきます。未曾有の国難に際しても国会を閉会したまま、トップダウンで前向きの対応を協議することもせず、不評を買った「安倍のマスク」の再交付などということを言い出す始末です。そんな資金があるらば、過酷な環境で必死になって患者への対応をしておられる医療従事者の方々に多大な経済的支援をすべきであると、何故考えないのでしょうか。

 さて、このような新型コロナウイルス蔓延状況のただ中にあっても、やはり坐禅工夫に邁進しようとする人々が何人もおられることに心を強くしました。私が新聞などのインタビューで、「三昧境」を体験することの大切さとその法悦に関して述べた記事を読まれて、月例坐禅会に初めて参加された年配の方々がおられます。また数十年も坐禅修行をされているヨーロッパ人の方が、無字の公案工夫の仕方について熱心に問い合わせて来て、何とか真の禅定に入りたいと念願されておられます。あるいは、十数年前から光雲寺に来られていた男性に対して、家庭問題の克服のために「無字の公案工夫」を勧めたところ、次第に佳境に入って色々な周りの環境が気にならなくなり、顔つきまで格段に明るくなって来られたのは、嬉しく思いました。こういう方の相談に乗る際には、多忙でも、また疲れていても、心を込めてお相手するようにしていますが、そうすると話をするこちらも益々心地よくなり、ちょうど工夫三昧を経験したときのような法悦が現前して、来客ともども法悦に包まれた時間を過ごすことになるから不思議です。

 皆さん方も新型コロナウイルス問題などで心労の多い毎日を送っておられるかも知れませんが、工夫三昧を心がけることによって充実した毎日を送られませんか。

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