「工夫三昧の重要性について」2019年8月【No.194】
「足、実地を踏むということ」と題した先日のコラム、拙寺での学生さんたちの坐禅研修と小衲による法話などの結果をお知らせすると申し上げましたが、そのご報告を申し上げます。
当日集まった5人の学生さんたちは最初に1時間の坐禅研修をしました。坐禅のあとの法話では、小衲は、数息観や公案工夫により三昧境に入った自分自身の経験を通常の場合よりも詳細に心を込めて話した積もりです。その後、客間に移動して小衲が白隠禅師の「臘八示衆」などを提示しながら、実践的基盤を伴わない教学や理論的探究のむなしさを説明し、足、実地を踏んだ修行の必要性を力説致しました。気がついたら、あっという間に2時間が経過していました。そのあとで、お寺の畑で採れた無農薬野菜で作った料理を振る舞ったのですが、もちろん費用は一切頂いておりません。若い将来性のある人たちに何とか坐禅や公案工夫などの修行の重要性を肝に銘じてもらいたいという思いから、今回このような企画をしたものです。
学生さんたちからどのような反響があるのかと思っていましたが、大学二回生の学生さんから次のようなメールを後日頂きました。ご承諾を得た上で引用させて頂きます。「先日は有難き仏縁を頂きありがとうございました。教学を学ぶだけでは得られない貴重な体験でした。工夫することを忘れ、求道に対して気の緩みが生じていた僕には、どの言葉も自分のために発せられた気がしてしまいました。先日の仏縁、ご法話を胸に刻み、工夫し精進に励みたいと思います。これから、土曜の夜坐禅でお世話になるなることがあると思います。その折はどうぞ宜しくお願い致します。」
このメールをもらった後で、この学生さんが「人生観が変わるほどの衝撃を受けた」と感激してくれ、小衲の力説した「四六時中の工夫」をすでに実践していることを聞き及びました。そこで彼に「いま一度お寺に来られませんか」と誘いのメールを送ったところ、同学年の学生さんと共に再度来訪され、光雲寺に下宿中の人も含めて、3名でまた法話の機会をもつことができました。以下はそのあとで、彼が送ってきたメールです。
「本日はお話し、お食事等ありがとうございました。一度ならず二度までもこのような機会を頂けて、本当に感謝しています。ありがとうございました。前回、四六時中の工夫について教えていただき、感銘を受け、工夫三昧に身を投じようと思ったにも拘わらず、自らの甘さに甘え、四六時中の工夫を誤解した工夫に励み、目指すところを間違えていた自分が、本日のお話しで浮き彫りにされました。三昧境に至りたいという『はからい』心に満たされ、煩悩が絶えませんが、三昧境に至るべく、精進して行きたいと思います。どうぞこれからも宜しくお願い致します。」
このような学生さんがいるのは本当に頼もしいことです。これからも彼らと一緒に工夫三昧の醍醐味を味わって参りたいと思っております。