「新年を迎えて」2014年1月【No.127】

新年明けましておめでとうございます。昨年は台風18号で京都などの関西が、26号の被害により伊豆大島が甚大な被害を蒙った。いずれも「予想外の豪雨」による被害である。特に36人の犠牲者が出た伊豆大島では、専門家の調査団の教授が「国内でこれまで見た中で最もひどい現場だった」と驚いたほどである。土石流被害に遭って自宅をなくし仮設住宅に入っている人たちにとっては、「正月が来る感じがしない」というのが実感であるというが、東北大震災でいまだ仮設住宅に住むことを余儀なくされている人たちも同様であろう。こうした苦境におられる人たちが一刻も早くその状況を脱却できるように政府が尽力して頂きたいものである。

この光雲寺は南禅寺の境外塔頭であるが、このたびの台風18号のもたらした豪雨により、南禅寺本山も裏山からの土石流が大量に流れて、庫裡近辺や山門までの道路、苔庭などが土砂で広範囲に埋まってしまった。その惨状たるや、眼を疑うほどのものであった。しかし内局の尊宿方や若い部員さん、本山勤務の方々、本山出入りの造園業などの尽力で、観光客が多くなる11月下旬の紅葉の時節までには、何とか元通りに復旧されたのである。テレビの映像などでは嵐山の渡月橋が水をかぶる様が、豪雨の象徴として再三放映されていたが、東山の被害もこのように甚大であった。

今年はこのような激甚災害が起こらないことを願うばかりであるが、それにしてもいかなる災難がいつ何時起こっても不思議ではない。大地震などに対する日頃の心構えが必要であることはいうまでもない。光雲寺では備蓄品の追加購入をしたところである。

わが国を取り巻く国際環境に眼を転じれば、昨年は野田前政権による尖閣諸島国有化を機に、中国との関係が悪化の一途を辿った。習近平政権になって中国は「海洋強国」を目論んで尖閣諸島近辺の日本の領海に再三にわたり進入を繰り返し、尖閣諸島が自国固有の領土であるという既成事実を積み重ねて行っているように思える。

11月23日には突如として防空識別圏を設定して公告を示し、「防空識別圏は中国国防省が管理する」とした上で「圏内を飛ぶ航空機は、中国国防省の指令に従わなければならない」とし、「指令を拒否したり、従わなかったりした航空機に対して中国軍は防御的緊急措置を講じる」と明記したが、それは田母神俊雄氏のいう如く、「防空識別圏に名を借りた空域の管轄権の主張」であり、わが国の到底受け容れることのできぬものである。

さらに韓国の朴大統領は就任して以来、「日本からの離反と中国への接近」を国是としてことあるごとに執拗な反日発言を繰り返し、「日本は正しい歴史認識を持つことが必要だ」と海外の要人に対してさえ声高に主張する始末である。以前から韓国のこのような姿勢を疑問視していた小衲は、韓国から日本に帰化した呉善花(お・そんふぁ)女史の幾多の書を読んで、「なるほど」と納得できた次第である。

昨年の12月初旬に刊行された女史の『なぜ「反日韓国に未来はない」のか』(小学館新書)は実に好著といってよい。「韓国人も日本人も、この本を読んでから私を批判してほしい」と著者が公言しているだけあって、まことに的確で冷静な韓国論である。日本人の書いた嫌韓論や呆韓論の類はどこか韓国のあら探しに終始している観があるが、呉善花女史のこの書は韓国が何故に反日にならざるを得ないのかを自らの体験を踏まえて、強固な反日主義者たちが政治的な実権を掌握していった結果、「反日主義という大義名分が韓国建国の精神を支えている」と論断している。その根底には母国のどうしようもない状況に対して心からの義憤を禁じ得ない思いが垣間見える。母国を何とかしたいという愛情が感じられるのである。

もともと呉善花女史は朴大統領と同じく、韓国でもっとも強烈な反日教育を受けた世代であるが、親たちの世代から「日本人はとても親切な人たちだった」という証言を再三聞いて、日本統治経験者には親日家が多いという事実を指摘している。女史は日本統治時代の朝鮮での生活経験を持つ多数の日本人と韓国人に直接インタビューして、その成果を『生活者の日本統治時代』(三交社)という好著に著し、当時の日本人と韓国人とは友好的で「よき関係」にあったということを証明している。しかし李承晩(い・すんまん)、朴正熙(ぱく・ちょんひ)以来、韓国では反日教育が政府の政策として促進され、強制的な従軍慰安婦の動員など見た者は一人もいないにもかかわらず、それをたてにとって「日本は正しい歴史認識を持つことが必要だ」などと大統領が先陣を切って声高に叫ぶ始末である。

「日本の統治時代はよかった」といって若者に殴り殺された九十歳過ぎの気の毒な韓国人老人がいたが、韓国国民はこの若者の方にやんやの喝采を送ったという出来事はこの国の民度の低さを改めて証拠立てている。「親日家である」と公言すれば生きてはいけない国とは何という愚かで情けない国であろうか。「韓国こそ正しい歴史認識を持つことが必要だ」と応じたい思いである。韓国人に理性と謙虚さがあれば、呉善花女史の入国を拒否することなどせずに、女史の『なぜ「反日韓国に未来はない」のか』という労作を韓国語で出版してそれを虚心坦懐に味読することである。

中国に関しては中国から日本に帰化した石平氏や台湾から帰化した黃文雄氏らが色々と論じている(『中国はもう終わっている』(徳間書店)。要するに習近平体制はもうすぐ破綻するが、そのような中国にすりよっている韓国を待っているのは、「中国の属国になって中国と共倒れになるという、哀れな将来」(石平氏)であるという。それは韓国という国は大局に立って物事を見ることができないが故である。

ひとつ付け加えておきたいのは、靖国問題や従軍慰安婦問題を取り上げて中国や韓国につけいる隙を与えたのは、石平氏や黃文雄氏らが指摘しているとおり、朝日新聞を始めとする反日メデイアである。たとえば従軍慰安婦の強制連行にしても吉田清治という元軍人が書いたフィクションを朝日新聞が大々的に取り上げて報道したせいで、事実無根のことが一気に広まったという経緯がある。反日的であれば何か進歩的だというような風潮の愚かさからもういい加減に脱却しなければなるまい。

この政治状況はちょうど日清戦争前夜に酷似しているという指摘がある。中国や韓国などの「アジアの悪友との交遊を謝絶せよ」という福沢諭吉の警告は正論である。わが国は中国の国民党と共産党との内乱に巻き込まれて泥沼のような日中戦争に巻き込まれてしまったのである。自然災害はいつ起こるかも知れないが、日本を取り巻く政治状況も予断を許さない。くれぐれも指導者たちが道を誤らないように願いたいものである。

(このコラムを作り終えたあとでヘンリー・ストークス著『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』〈祥伝社新書〉という好著を読む機会があった。滞日50年の欧米人が先の大戦を実に公平に論じている。ご一読をお勧めしたい。)

なお新年最初の月例坐禅会につきまして、1月12日は南禅寺本山での行事がありますので、13日の成人の日の祝日に坐禅会を振り替させて頂きます。

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