「旧年の回顧と新年の抱負」(月刊コラム【No.115】2013年1月)

新年明けましておめでとうございます。昨年は一昨年の東北大震災のような大惨事はなかったが、東北大震災の復旧は遅々として進んでおらず、原発事故による放射能の拡散は想像以上に深刻な状況のようである。一刻も早い対処が望まれる。それに劣らず混迷を極めていたのが政治状況である。昨年末の衆議院選ほど不正選挙の疑いが取りざたされている選挙はあるまい。こちらの方も大方の疑念を晴らすような解明が必要となるであろう。

さて、この光雲寺(南禅寺禅センター)に関して申すならば、昨年は禅センターの坐禅希望者はますます増えて、2500人に届く月もあるようになった。一般の方々の参加も多いが、何といっても修学旅行の小中高生が一番多い。坐禅のあとの法話を生徒たちが眼を耀かせて真剣に聞き入ってくれるさまを目の当たりにして、話すこちらの方もいささかも手を抜かずに心をこめて対応するようになるものである。

異色であったのは、大リーグ・ヤンキースのグランダーソン選手が東北大震災慰問の帰途に「京都で坐禅をしてみたい」という希望で、TV東京からの依頼により、4,5人の外人さんが坐禅をしたことである。身長はさほど大きい方ではなかったが(185cm84kg)、デイレクターによれば、彼は「大リーグの選手会長であり、大リーグきっての人格者である」ということであった。坐禅のあとで挨拶された彼の風格と眼の透明度はこの言葉を証拠立てているように思えた。

小衲の一番弟子はいま相国寺の僧堂で最古参になっており、ますますどっしりとした重みができてきているが、師匠の眼から見れば、まだまだ至らぬ点が多々あり、向上の余地がある。制間になって僧堂を暫暇してきた際には、しっかりと鍛え直そうと手ぐすね引いて待っている次第である。初心の者はあまり厳しく取り扱うと気持ちがすぐに萎縮してしまいがちであろうが、僧堂で長年修行した経験があれば、かえって師匠の峻厳な対応の有難味も理解するであろうと推測するのである。

さらに嬉しかったのは、1年半前に3ヶ月の修行を終えて九州の自宅に戻った60歳初めの剣道七段の元高校体育教師が、昨年の10月になって再度3ヶ月の修行を希望して来山したことである。以前と打って変わって万事に積極的になった彼は、非常に頑張って日々を過ごし、顔つきや風格も格段に向上した。3ヶ月経って彼が自分を光雲寺に紹介された南禅寺管長のところへご挨拶に伺った際には、「なかなか生気に満ちたいい顔をしておる」とのお褒めの言葉を頂戴しました、と笑顔で報告してくれた。

こちらの方も心をこめて応対したところ、最後は涙を浮かべるほどに感激してくれた。これも彼自身が真っ正直に禅修行に邁進した成果であろう。門送して「また光雲寺が懐かしくなったらまた戻って来たらいいよ」と声を掛けた次第である。

光雲寺には新年早々2名の出家希望者が弟子入り予定である。彼らもどうか先輩たちに負けないように充実した法悦の日々を送ってもらいたいものである。

(なお、月例坐禅会は1月の第2日曜日は檀家さんの法要があるので、翌日成人の日の祝日の14日に行う予定である。ご参加の方々はご注意下さい。)

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