「法悦の現前」2025年08月【No.264】
連日酷暑の日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。昨年の青梅の収穫は拙寺である光雲寺では2kg半でしたが、今年は29kgの収穫がありました。相国寺僧堂から頂いた47kgのうち、15kgは隠侍さんを通じて、南禅寺山内寺院に届けてもらいました。その結果、今年の梅干しは61kgにもなりました。7月下旬に赤紫蘇に漬(つ)けた梅を地面に広げた「すのこ」の上に並べる作業はなかなか大変で、初日は5人で2時間半もかかりました。3日目の午後には干し終わった梅を大壺に入れました。ちょうど来客予定時間の少し前だったのですが、お客様が予定より早く来られたので、いつもは法衣に着替えて応対するところ、その時は事情を話して作務衣のままで逢うことにしました。
その人はもう15年ばかり前からひと月に一度お寺に来られ、私に心の用い方を尋ねるのを常としています。色々と心に問題を抱える彼に対して、私は無字三昧の工夫を勧(すす)め、彼も素直に私の話しを聞いて工夫に邁進しているようなのですが、次から次へと自分のやり方に疑問が生じて来て素直に工夫できないようです。最初、彼は作務から上がったばかりの私を見て、「えらい生き生きとしていてお若く見えますね」と感嘆してくれました。作務をして全身を使った余韻でそうした雰囲気を醸(かも)し出しているのであろうと思った次第です。
そして彼が日頃疑問に思う心の用い方を臨機応変にときほぐしてあげると、次第に納得して笑顔になって行きました。そうして私がどのように工夫して三昧境をたびたび体験したかということを実例を挙げて話しているうちに、面白いことに二人とも法悦に包まれる時間を共有することができたのです。私は彼に「最近、メール参禅をお願いしますなどと言われましたが、それよりも実際にお逢いしてこうしてお話する方が良いと思いますよ」というと、彼も「その通りですね」と納得してくれました。彼は帰りの際にはとても感謝してお寺をあとにしました。
帰ってから早速送られてきたメールを見ると、彼の心境がよく分かります、
「お会いできておかげさまで気持ちがすっきりしました。これからは明るくシンプルにやっていきます。涼しくなったら、泊まりで作務をしに行かせてください」。皆さん方もささいなことに心を煩わされることなく、法悦に包まれた日々を送られませんか。