「禅寺の日常生活の一風光」2025年06月【No.262】

 京都の南禅寺の境外塔頭であるわが光雲寺では、現在興味深い光景が見られます。早朝の三時五十分に起きて朝食(粥座)の支度をしたあと、門扉(もんぴ)を開けて前庭の錦鯉に餌をやろうと室外に出ると、ときおりマガモのカップルが餌をもらいに玄関先で待っていることがあります。そのあとで方丈に面した一番大きな中庭の池に来ると、そこにもカルガモのカップルが餌を待っています。無邪気な鴨たちの様子はまことにほほえましいものです。

三つ目の池の鯉にも餌をやったあとで、塀の外の掃除を始め、それが済んだら二棟の宿泊施設がある石畳(いしだたみ)の参道を掃きます。そのあとで畑の水まきをしてから、6時10分に粥座となります。食べ終わってから8時まで下宿中の4人の学生さんたちと一緒に草引きや畑作りなどの作務をします。当日にどこの草引きをするか、どういう作務をするかはお寺全体の状況を観察して、粥座の前に皆に指示します。二十代の、孫のような若者たちと一緒の作務は辛いように思われる方もあるかも知れませんが、身体を動かすことが77歳の私にとって健康に良いと確信して、率先垂範して作務をしております。

作務を上がって一息ついてから外を見ると、また鴨のカップルが餌を求めて来ていることがあります。こうして一日に3,4回は鴨の餌やりをしていることも稀ではありません。もちろん「南禅寺禅センター」の看板を掲げて坐禅研修を行っている関係上、坐禅指導を優先して行っています。若い学生さんたちに丹田呼吸の工夫の仕方を教えて心の安らぎを得てもらうように指導するのは、やりがいのある仕事です。それ以外にも毎土曜の夜坐禅や、月二回の月例坐禅会もあります。

夜になると、今の季節には蛍が飛び回っております。今年は例年より多く見受けられます。この環境を大切に守って行きたいと考えております。昼間は鴨のカップルが遊びに来て、夜間には蛍が乱舞するとは、東京や大阪などの大都会に住んでいる人々にとっては考えられないことでしょう。蛍は毎年6月20日から7月10日ごろまで出現します。ご近所の方で蛍をご覧になりたい方はお目にかけたいくらいです。

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