「臨済宗の禅修行」2023年10月【No.243】

今年の1月から光雲寺に下宿し、2月12日に得度式を挙げたドイツ人の青年については、以前に何度かお話し致しました。彼は「早く僧堂に入って本格的な禅の修行をしたい」という念願をもっていますので、この10月4日に京都の八幡にある円福寺僧堂に掛搭(かとう)して修行に励むことになりました。石清水八幡宮の近くにある、臨済宗最初の専門道場です。彼は前日の3日に出立し、網代傘(あじろがさ)とわらじという昔ながらのいでたちで行脚して、5時間ほどかけて僧堂近くのお寺に投宿させて頂き、翌朝の6時半くらいに「たのみましょうー」と入門の一声をかける予定です。

 彼の僧堂行きのことを話すと、異口同音に「何年ぐらい修行されるのですか」と聴かれるのですが、「まあ、最低10年はやることになるでしょう」と答えております。しかし、実のところ一番大切なのは、修行期間の長短ではなく、修行の中身です。真剣に工夫三昧の日々を続けていれば、僧堂生活も法悦の日々が続いて楽しくなります。道心のある彼にはぜひとも真の三昧境を体験して解脱(げだつ、悟り)の境地に達して欲しいものです。

 3週間ほどで住職資格をとれる宗派もあるようですが、ブッダと同じ悟りを得ることを主眼とする禅宗では、そういうわけには参りません。3年、5年、10年でもまだまだ不充分です。住職資格を得るために僧堂生活を送るのではなく、何とかして仏法の真髄を得ようと勤める必要があります。

 南禅寺開山であり光雲寺の開山でもあられる大明国師(無関普門禅師)は13歳で出家され、40歳近くまで日本国内で修行生活を続けられたのち、中国の宋の国に渡られ、更に10年以上の修行をされました。住職資格等というものは国師の眼中にはなく、ただただ仏法を究めようという大願心をもっておられたと拝察されます。

 去る9月20日に19歳になったばかりのドイツ人の青年のこれからの僧堂での禅修行も、このような名僧を模範とした充実した工夫三昧の日々を送ることを念願してやみません。

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