令和6年「徒弟安居会」 2024年8月【No.252】
大本山南禅寺では7月21日(日)から27日(土)までの1週間にわたり、「徒弟安居会」を開催致しました。この「徒弟安居会」というのは何らかの事情で僧堂で修行する機会がなかった人たちに対して、住職資格が取れるようにと戦後設けられたものだと聞いております。僧堂に準じたさまざまな修行をするわけですから、なまやさしいものではありません。ましてや例年にない酷暑の中での研修は、在家の日常生活を送ってきた人たちにとってはかなり辛い体験になったことと思います。南禅寺で住職資格を取るためにはこの安居会に5回参加する必要があります。
まず初日の午後3時から5時半まで庭詰(にわづめ)と申しまして、亀山法皇ゆかりの南禅院の玄関先で「頼みましょうー」と声をかけてから、身じろぎもせずにはいつくばって入門志願の赤心を披露致します。それが終わり、「薬石」と呼ばれる夕食のあとで、今度は旦過詰(たんがづめ)と申しまして、午後6時から9時まで部屋にこもって坐禅三昧を行じます。もっか南禅院は改修中ですので、龍淵閣の安居寮で旦過詰を行います。
2日目には午前4時の開静(起床)ののち朝課(お経)を読んでから1時間の坐禅をします。そして開講式の作法の指導を受けたあとで、粥座(朝食)があります。8時からの開講式は、仏祖へのお経を読んだのち、私が管長として参加者たちに垂訓を述べました。「酷暑の中、大変だとは思いますが、坐禅工夫の基本となる数息観を四六時中続けるように勤めて頂きたい」というのが主旨でした。その他にも各部長さんから檀信徒教化の方法や宗務の実際を学び、作務(労働)や坐禅の時間が続きます。
3日目と5日目には私が『無門関』を講本として提唱を行いました。第4則の「胡子無鬚(こすむしゅ)」と第5則の「香厳上樹(きょうげんじょうじゅ)」です。提唱のあとで師家のいる部屋に入って禅工夫の指導を受ける参禅があります。私は公案を授けるよりも、より基本的な数息観の実践を間断なく真剣に行うように指導致しました。
1週間の最終日には閉講式がありますが、私は「やれやれこれで安居会が終わった、などという安易な気持ちではいけません。僧堂の雲水さんに負けないくらい真剣に工夫を続けるように」と垂訓致しました。最後に参加者の1人が低頭して、「この1週間の修行が大変で、僧堂の雲水さんはこうした厳しい修行を毎日やっておられることに感心致しました」と真情を吐露しました。酷暑の最中で部長さんたちや部員さんたちも大変だったようで、次回からは7月下旬ではなく、3月に徒弟安居会を開催するということですが、今回参加した二人がどれほど真剣に工夫して法悦を体験してくれるのかを楽しみにしております。