「幸齢者」の推奨2024年3月【No.247】
最近月二回の月例坐禅会には毎回20人近い参加者がみえます(参加費千円)。斎座のうどん(つけ麺)と最後のお抹茶茶礼がありますので、準備する係りはさぞかし大変だと思います。それでも初めて参加した人たちが引き続いて来られるのは有り難いことです。欧米からの参加者が多いことも最近の傾向です。その中でも私が特に感心するのは、80歳近い一番年長の男性が毎回最初に来られることです。
その方は毎土曜の夜坐禅(午後8時から9時まで、無料)にも欠かさず参加し、その上、月例坐禅会に来られています。先日の月例坐禅会に早朝の6時半に来られたので、驚いて、「一体どうしてこんなに早く来られたのですか」と尋ねると、「土曜の夜には自家用車で参加していますが、高齢でそのうちに運転免許を返納する必要があると思い、今日はバスを使って来ました」ということでした。ほとんどの人は8時以降に来られるところ、1時間半も早く来られたのです。その分、長時間、草引きなどの作務をしなければなりません。しかも受け答えが実に元気で満面の笑みをたたえておられるので、こちらも自然に嬉しくなります。坐禅工夫を生き甲斐に感じるような歳のとり方は、まことに結構なことだと思います。
お釈迦様からの伝統の法を嗣(つ)がれたインド人の僧侶に、80歳になって初めて出家された方がおられます。それを知った子供たちが、「そんなに年をとってからお坊さんになっても、ろくな修行などできるわけがない」といって冷やかしたといいます。ところがその方は発奮して横になって寝ることなく修行して、遂にわずか3年ばかりでお悟りを開いて、伝法の祖師の1人になられたということです。たとえ年を重ねていても、志さえあれば出来ないはずはありません。
私は現在76歳になりますが、わが身の歳を忘れて、朝一番に起きて総勢8人の粥座(朝食)の支度をし、そのあとでヘッドランプを点(つ)けて内外の掃き掃除をします。私が終わる頃にようやく、下宿の学生さんたちが掃除に出てまいります。6時10分からの朝食が終わってから、今度は色んな作務(労働)や草引きなどを率先してやるようにしております。20歳過ぎの若者と一緒に作務をするのは自分の健康のためにもよいと思い、楽しみながら日々を過ごしております。
最近、和田秀樹という高齢者医療専門家の先生の『八十歳の壁』という本を興味深く拝読致しました。すでに発行部数が80万部を超えている本だそうです。「ほとんどの医者は検査の数値だけを見て、患者は診(み)ていない」、「80歳を過ぎたら健康診断は受けなくて良い」など、実に明快な解説が続きます。そして「80歳以上は高齢者ではなく、明るくて希望の持てる『幸齢者』という呼び方で呼びましょう」と提案されております。
できるなら日々を楽しみながら身体や頭を動かして健康寿命を継続し、充実した老年を過ごしたいものです。その場合、ゆったりと腹式呼吸をする習慣をつけると、さらに毎日が充実するかと思います。皆様方の楽しい充実した老後をご祈念申し上げます。