「コロナ自粛と工夫の悦び」2020年07月【No.204】

 新型コロナウイルスの自粛がようやく解除されましたが、それでも油断大敵です。特に50人超えが連日続いている東京を中心とした首都圏は、要警戒です。世界全体の感染状況は日を追って増大しており、ついに1000万人を超えました。ことに米国は感染記録を更新して250万人以上の感染者がいるというまことに深刻な事態の渦中にあるのですが、それにもかかわらず経済復興のために自粛がおおむね解除され、米国民もそれほど厳格にコロナ対策を行っていないのには驚かされます。これから感染者の増大傾向が続く欧米などからの観光客が入国してくれば、わが国の感染者がまたしても飛躍的に増大することになりかねません。何としても厳格に水際対策を行うほかはないと思われます。

 さて、皆さん方は自粛期間中いかがお過ごしでしたでしょうか。不要不急の外出を控えて家に閉じこもることによるストレスを感じた人がかなり多くおられたと聞いております。一般に寺院、ことに禅宗寺院では、内外の日典掃除を日々行い、雑草を引くなどの作務をして伽藍を清浄に保つことが基本的生活となっておりますので、連日ストレスを感じる暇がないくらい色々やることがあります。とりわけ梅雨のまっただ中で、雑草は引き抜いたあとからすぐに生えて参ります。フェイスブックでの呼びかけに応じた学生さんたちが熱心にバイトで草引きをしてくれているのですが、まだまだいくらでも人手がほしいほどです。

 「南禅寺禅センター」としての坐禅研修は3月から6月までの4ヶ月間は中止しましたが、土曜夜坐禅と月例坐禅会は6月から再開致しました。驚いたことに数ヶ月ぶりの夜坐禅の参加者は用意していた座布団がすべて埋まるほどの盛況でした。思うに、自粛中のストレス解消のためか、あるいは、こうした緊急時にこそ坐禅工夫により心を整えて平静を保つことの必要性を痛感された結果でしょう。すでに以前のコラムで申し上げたように、小衲は毎回、「真剣な工夫を欠いた坐禅は時間の浪費にほかなりません。数息観でも無字三昧の公案工夫でも、微塵の油断もないように命がけで真剣に工夫しなければなりません。また、ただ坐禅中だけでなく、『動中の工夫』といわれるように、四六時中の工夫三昧を心がけて頂きたいものです。真剣に工夫すれば、在家の皆さん方でも必ず素晴らしい三昧境に入ることができますよ。」と策励の言葉を述べるようにしております。

 嬉しいことには、この自粛期間中にも工夫三昧の要点について熱心に質問したり、工夫純熟の現状を報告してくれた方が何人かいたことです。自粛中にも公案工夫を忘れることがないのは感心なことですが、本当はそんな質問や報告をする暇(いとま)もないほど工夫三昧に打ち込んでもらえたら、師家としてどれほど嬉しいか知れません。

 おそらく新型コロナウイルスの第2波、第3波は起こると思われますが、その襲来をものともせずに吹き飛ばすほどの迫力で、脊梁骨を立てて臍下丹田に満身の気を充実させ、ご一緒に無字三昧の法悦の醍醐味を味わい尽くそうではありませんか。

月刊コラム(毎月更新)

楽道庵住職ブログ

facebook

臨済宗大本山南禅寺

× 閉じる