「工夫三昧」2020年04月【No.201】

今世界全体がコロナウイルスの感染が拡大の一途を辿っているという、まことに憂うべき状況にあります。欧米などでは医療崩壊も起こっているということで、この先一体いつになったら終息するのか、予測のつかないほどです。わが国でも東京の感染者は日々増えていく傾向にありますし、拙寺のある京都では、ヨーロッパに卒業旅行に出かけた大学生の一行3人からクラスターが発生して、現時点で33名の感染者が出たということです。大学からの海外渡航自粛要請を真面目に受け取らず、爆発的感染が進行中のヨーロッパに出かけるとは、何という軽率な行動でしょうか。そのせいで、帰国後に帰省した感染者の学生達はそれぞれの出身地にコロナウイルスを撒き散らしたことになります。大いに猛省して頂きたいものです。
さて、拙寺ではこれまでこうした状況下でも坐禅は休止しておりませんでした。禅センターの3月の坐禅予約はすべてキャンセルになりましたが、月二回の月例坐禅会や毎土曜の夜坐禅は依然として続けておりました。それどころか、先月のコラムでも申し上げましたとおり、下宿している学生さん達の要望で、先月の12日から15日迄の4日間、集中坐禅研修である「摂心」を執り行いました。少人数に限定して充分な距離を取っての坐禅でしたが、
皆なかなか頑張って工夫三昧の坐禅に励み、とても充実した時間を過ごすことが出来たように思います。この摂心に入るに際して、小衲は「たとえ摂心を行ったとしても、目の色を変えて真剣な工夫を四六時中行わなければ、実りは乏しい。どうせやるなら、命懸けの工夫三昧に没頭せよ」と再三にわたり注意を促しました。
真剣に工夫するなら必ずや三昧境に入ることが出来ますが、気の抜けた形だけの坐禅では何年経っても何十年経っても禅定に入れるはずがありません。今回の摂心に参加した人数は5名ですが、それぞれが応分の所得があったように思われます。一人の学生さんは摂心が終わって下宿に帰る道すがら、小衲が教えたように「無―、無―」と無字三昧の工夫に集中することによって、「気付いた時には、まるで自分が山や大地になったような、落ち着いた気持ちになっていました。これからも頑張っていきます。」というメールをくれました。
彼も来たる6月から光雲寺に下宿する予定です。
 4月から小衲は本山の行事などがあって多忙となるのですが、摂心に参加して指導的役割を果たした青年に、「これからも摂心をおこなってもいいよ」というと、「ホントですか!」という活き活きした反応が即座に返って参りました。ただ、コロナウイルスが蔓延している現今の危機的状況を考えると、やはり4月と5月のすべての坐禅研修(南禅寺禅センターの坐禅研修、及び月二回の月例坐禅会や毎土曜の夜坐禅)を断念する方が良いという結論に到りました。お寺への行き帰りにも感染する危険があります。工夫に没頭して三昧境の醍醐味を味わうことは自分一人でも充分に出来ることです。坐禅会が休みになるからと言って、工夫を怠るようではいけません。皆さん方も、こういう非常事態の渦中にある時節だからこそ、心を乱すことなく他人の目を気にすることなく思う存分に工夫三昧を楽しんで頂くことを念願しております。

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